仕事に追われてすっかり忘れていたが、父は昨日で86歳になっていた。
先月、父の戦友であり親友でもあり、姉の義父でもあるおじさんが亡くなった。
父とおじさんは、陸軍少年飛行兵の同期で、戦後も名古屋と東京の互いの家を行き来して、我が家とは親戚のような仲だった。
で、紛らわしいが、父とおじさんの、娘と息子が結婚したので、二人は本当に親戚になったのだ。
おかげで私も、自分の家同様に姉の嫁ぎ先に出入りすることになった。
通夜のとき、父はタバコに火をつけ、仏様になったおじさんに吸わせて、なんとそれを線香のように香鉢に立てた。
え?たばこ!?と思ったら、それは、父が大事にしている菊の御紋の入ったタバコだった。
父が警察署長時代に昭和天皇の警護をしたとき、皇室から授かったものだ。
桐の箱に入ったそのタバコを、父は当時、一本だけ吸って、あとは何十年も後生大事に保管していた。
入り口には軍服姿の写真が飾られ、戦争の記憶というものが、こうやってまたひとつ、あの世に持ち去られるのだと感じた。
血縁の親戚の死というのは、これまでも何度か経験したが、父と同期であるおじさんの死は、やはり近い将来迎えなくてはならない父の死を重ね合わせるような、あらためて覚悟を与えるものだった。
父が亡くなった時は、私も父がしたのと同じように、菊の御紋のタバコに火をつけて線香の代わりにあげることを忘れないようにしなくては、と心に誓った。
忘れるくらいに長生きしてほしいものだけれど。
とまあ、ちょっとセンチに父の一日遅れの誕生日を遠くから祝う。
今年も誕生日を迎えてくれて感謝。
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